年次有給休暇の基本知識|社会人として知っておきたいポイント
みなさん、年次有給休暇のこと、ちゃん知っていますか。
職場環境(風土)によって取得しやすさも様々だと思いますが、年次有給休暇について基本知識を習得しておくことは、社会人としての「たしなみ」です
そして実は意外と勘違いしている人が多い年次有給休暇制度。
ここで基本をしっかり押さえておきましょう。
年次有給休暇とは
有給休暇、年次休暇、年休、有休など、職場によってさまざまな呼び名がありますが、すべて「年次有給休暇」のことです。
さて、この年次有給休暇とはいったい何なのでしょうか。厚生労働省のHPにはこのように記載されています。
年次有給休暇とは、一定期間勤続した労働者に対して、心身の疲労を回復しゆとりある生活を保障するために付与される休暇のことで、「有給」で休むことができる、すなわち取得しても賃金が減額されない休暇のことです。(厚生労働省HPより) |
つまり、会社で定められた休暇以外に取得できる、有給(給与あり)の休暇のことです。「ゆとりある生活のため」が目的となります。
年次有給休暇取得のための2つのステップ
年次有給休暇を活用するためには、次の2つのステップが必要です。
1、年次有給休暇を付与して(与えて)もらう
2、年次有給休暇を取得(使用)する
1、年次有給休暇を付与して(与えて)もらう
付与とは、年次有給休暇を決められた日数もらうことです。この時点ではまだ有給休暇を取得(使用)していない状態です。いわば、休暇を手元にストックしている状態ですね。年休権ともいいます。
与えられる年次有給休暇の日数は、勤務した年数によって決められています。
継続勤務年数 | 付与日数 |
6ヶ月 | 10日 |
1年6ヶ月 | 11日 |
2年6ヶ月 | 12日 |
3年6ヶ月 | 14日 |
4年6ヶ月 | 16日 |
5年6ヶ月 | 18日 |
6年6ヶ月以上 | 20日 |
このように、長く勤務すればするほど付与される日数は増え、最大で20日が付与されます。
たとえば入社して1年6ヶ月経つと、11日の年次有給休暇が付与され、それをストックしておくことができるわけです。
ちなみにストックできる期間は2年で、付与された翌年まで繰り越すことができます。
ですので、1年6ヶ月目に11日付与され、2年6ヶ月目に12日付与された場合、手元には23日の年次有給休暇がストックされます。
2、年次有給休暇を取得(使用)する
付与された年次有給休暇を使用することを、「取得する」といいます。
付与されている年次有給休暇の日数の範囲内で、休暇を請求し、取得することができます。
当然、取得すれば付与されていた年次有給休暇の日数は減ります。
年次有給休暇の実情
世間ではどの程度、年次有給休暇が取得されているのでしょうか。
平成28年版 厚生労働省白書によれば、平成27年度は1人あたり年間平均約8.8日が取得されています。つまり、会社で定められた休日以外に、年間8.8日の休暇が取れているわけです。
この資料を見ると、大きな会社(労働者の多い会社)のほうが取得日数は増加傾向にあるようです。
労働者が多いということは、年次有給休暇を取得した際、替わりの労働者が確保しやすいとも言えます。その影響でしょうか。
また産業別にみると、最も多く取得している「電気・ガス・熱供給・水道業」の13.6日に対し、最も取得日数の少ない「宿泊業・飲食サービス業」はわずか5.4日しか取得できていません。
おそらく「電気・ガス・熱供給・水道業」は「宿泊業・飲食サービス業」と比較して大きな会社(労働者の多い会社)が多いため、前述の会社の規模による年次有給休暇の取得日数の違いとも概ね合致します。
あなたの職場と比べていかがでしょうか。
年次有給休暇の「あるある」な勘違い
それでは、年次有給休暇の取得についてありがちな勘違いをいくつかピックアップしてみます。
「年次有給休暇は申請しないと付与されない」
誤りです。
年次有給休暇は労働者が請求しなくても、要件さえ満たしていれば勝手に付与されます。
「年次有給休暇は理由によって取得できない場合がある」
誤りです。
年次有給休暇をどのように使用するかは、使用者(会社)の干渉を許さない労働者の自由です。(「自由利用の原則」といいます)
ただし、「他社での就業のため」などの理由は、会社の「就業規則」に反する場合がありますのでご注意を。
「年次有給休暇は、いつでも必ず取得できる」
実はこれも誤り。労働者側に有利なことばかりではないようです。
年次有給休暇を取得すると、使用者(会社)の正常な運営に支障が生じる場合、使用者は労働者の年次有給休暇の時季を変更することができます。これを、「時季変更権」といいます。繁忙期に、労働者が一斉に同じ時季に年次有給休暇を取る場合、などが該当します。
「年次有給休暇は、1日単位でしか取得できない」
一部誤りです。条件がそろうと時間単位で取得が可能となります。(厳密にいうと、付与される時点で時間単位となっています)
条件とは、労使で時間単位の年次有給休暇を付与することに合意(労使協定の締結)をすることです。労使とは、労働者と会社のことです。
これが成立すれば、5日以内の範囲内において、時間単位で年次有給休暇を取得することが可能です。2時間早く自宅に帰らなければならない、といったときに2時間年次有給休暇を取得できるわけです。
特に子育て世代は急に子供を保育園などにお迎えに行かなくてはならない場面がありますから、助かりますね。
法律に関することばかりを書きましたが、実際のところ、年次有給休暇の利用しやすさは職場環境に大きく左右されます。
むやみに取得することで、結果的に働きづらくなることもあります。
ですが、出だしにも書きましたが、最低限の法律ルールを知っておくことは社会人としての「たしなみ」です。
正しい知識を身につけておきましょう。