「今年も年末調整の書類が配られる時期か…なんだか面倒だな」
毎年10月を過ぎると、多くのデスクワーカーが少しだけ憂鬱な気分になるのではないでしょうか。専門用語が並んだ書類を前に、つい後回しにしてしまいがちですよね。
しかし、年末調整は、払い過ぎた税金を取り戻すための大切な手続きです。少しの準備を怠っただけで、数万円単位で損をしてしまう可能性もゼロではありません。
この記事では、面倒な年末調整をスムーズに、そして絶対に損なく終わらせるために、10月の今からできる準備を分かりやすく解説します。
この記事のポイント
✅ 年末調整の基本がサクッとわかる
✅ いつから何を準備すればいいかが一目でわかるチェックリスト
✅ 損しないための注意点と、筆者が体験したリアルな失敗談
この記事を読めば、あなたはもう年末調整で悩むことはありません。さっさく準備を始めて、スッキリした気持ちで年末を迎えましょう!
そもそも「年末調整」とは?
年末調整とは、一言でいうと「1年間の所得税の過不足を精算する手続き」のことです。
会社員の場合、毎月の給料から所得税が「仮の金額」で天引き(源泉徴収)されています。この「仮の金額」は、生命保険の支払いや扶養家族の状況などが考慮されていません。
そのため、1年の終わり(年末)に、本来納めるべき「正しい税額」を計算し直し、天引きされた合計額との差額を調整します。
- 天引き額が多かった場合 → 税金が戻ってくる(還付)
- 天引き額が少なかった場合 → 追加で支払う(徴収)
多くの人は、生命保険料控除などがあるため、税金が戻ってくるケースがほとんどです。つまり、年末調整は「払い過ぎた税金を取り戻すチャンス」なのです。
【令和7年版】前年からの変更点をチェック!
税金のルールは毎年少しずつ変わる可能性があります。令和7年(2025年)の年末調整で特に注意しておきたいポイントをまとめました。
- 扶養控除の見直し(検討中): 現在、政府は「年収103万円の壁」に代表される扶養控除の縮小・見直しを検討しています。令和7年の年末調整に直接影響するかはまだ確定していませんが、今後の動向に注意が必要です。配偶者や扶養親族の働き方に変更があった場合は、特に最新情報を確認するようにしましょう。
※税制改正は非常に複雑です。必ず国税庁の公式サイトや、会社の経理担当者からの案内をご確認ください。
10月から始める!年末調整の「準備するもの」完全リスト
年末調整の書類提出は、一般的に11月中旬から下旬が期限です。慌てないように、10月のうちから手元にあるか確認を進めましょう。
1. 会社から配布される書類
会社から「扶養控除等申告書」や「保険料控除申告書」といった書類が配布されます(近年はWebシステムでの入力が増えています)。氏名や住所、マイナンバーを記入し、扶養家族に変更がないかなどを確認します。
【注意点】
- 特に年の途中で家族の状況(結婚、出産、扶養から外れるなど)に変化があった場合は、正確に申告する必要があります。
- Web入力の場合、ログインIDやパスワードが不明な方は早めに担当者に確認しておきましょう。
2. 各種保険料の「控除証明書」
10月頃から、保険会社などからハガキや封書で郵送されてきます。年末調整で節税効果の高い重要な書類なので、絶対に紛失しないようにしましょう。
- 生命保険料控除証明書: 一般生命保険、介護医療保険、個人年金保険など。
- 地震保険料控除証明書: 火災保険と一緒に契約していることが多いです。
- 社会保険料控除証明書: 国民年金や国民健康保険の保険料を、給与天引き以外で自分で支払った場合(例:年の途中で就職した、家族の分を支払ったなど)。
- 小規模企業共済等掛金控除証明書: iDeCo(個人型確定拠出年金)や小規模企業共済に加入している場合に届きます。
【注意点】
- 証明書は「令和7年分」と書かれていることを確認してください。
- もし紛失してしまった場合は、各保険会社や機関のWebサイトやコールセンターから再発行が可能です。ただし、時間がかかる場合もあるため、気づいたらすぐに手続きをしましょう。
- 近年は郵送ではなく、電子データ(電子証明書)で発行されるケースも増えています。
3. 住宅ローン控除のための書類(対象者のみ)
住宅ローンを利用してマイホームを購入・リフォームした方は、大きな節税効果が期待できます。
- (初年度): 確定申告が必要です。年末調整では手続きできません。
- (2年目以降): 税務署から送られてくる「住宅借入金等特別控除申告書」と、金融機関から送られてくる「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」の2つが必要です。
【注意点】
- 税務署から送られてくる書類は、複数年分がまとめて送付されます。失くさないように大切に保管しましょう。
- 金融機関からの「残高証明書」は10月頃に届くことが多いです。
【筆者の失敗談】ふるさと納税のワンストップ特例が…確定申告で無効に!

ここで、筆者が実際に体験した「年末調整と確定申告の落とし穴」についてお話しさせてください。これは、特に「ふるさと納税」と「医療費控除」を両方利用する方に知っておいてほしい話です。
私は数年前、ふるさと納税の「ワンストップ特例制度」を利用していました。これは、確定申告をしなくても寄付金控除が受けられる便利な制度です。
その年は、たまたま家族の医療費が多くかかったため、「医療費控除も受けよう」と考え、年明けに確定申告をすることにしました。
会社の年末調整はいつも通り提出し、その後、e-Tax(国税電子申告・納税システム)を使い、ネットで医療費の申犢だけを行ったのです。
――これが、大きな間違いでした。
数ヶ月後、新しい住民税の通知書を見て愕然としました。なんと、ふるさと納税をした分の控除が一切適用されていなかったのです。
慌てて税務署に問い合わせて判明した理由は、
「医療費控除など、いかなる理由であれ『確定申告』をした場合、申請していたワンストップ特例はすべて無効になる」
というルールでした。
確定申告をするなら、その申告書に「医療費」と「ふるさと納税の寄付金」の両方を記載する必要があったのに、私はそれを知らず、ふるさと納税分を書き忘れてしまったのです。
結果、私は税金の控除が受けられない「ただの寄付」をしたことになり、後日、税額を修正してもらう「更正の請求」という、非常に面倒な手続きをする羽目になりました。
【この失敗から得た教訓】
ふるさと納税でワンストップ特例を申請しても、医療費控除などで確定申告をする場合は、必ず確定申告書に「ふるさと納税の全額」を記載しましょう!
今年は10月1日からふるさと納税サイトなどでの「ポイント付与」が禁止された影響で、例年12月末に駆け込み寄付をしていた方が、今年は9月末までに寄付を済ませるケースが多かったようです。
時期が早まったことで、確定申告や年末調整までの期間が長くなり、「寄付したことを忘れてしまった」という事態も起こりがちです。
- 自治体から届く「寄附金受領証明書」を必ず保管
- ワンストップ特例制度を使う場合は、翌年1月10日必着で申請書を提出
- 確定申告で寄附金控除を申告する場合は、この証明書を添付するか、マイナポータル連携でデータを取り込む
繰り返しとなりますが、ワンストップ特例と確定申告は併用できません。
「うっかり控除漏れ」にならないよう、年末までにしっかり確認しておくと安心です。
まとめ:早めの準備で、心に余裕を
年末調整は、年に一度の少し面倒なイベントかもしれません。しかし、一つひとつは決して難しい作業ではありません。
- 10月のうちに必要な書類が何かを把握し、集め始める。
- 保険料控除証明書などが届いたら、失くさない場所に保管する。
- ふるさと納税や医療費控除など、確定申告との関係性を正しく理解する。
この3つを意識するだけで、年末の忙しい時期に慌てることなく、スムーズに手続きを終えることができます。
ぜひこの記事のチェックリストを活用して、賢く、確実に、払い過ぎた税金を取り戻してください。

