介護情報基盤への準備ガイド:介護関連事業所が「今」知るべき助成金とDXの進め方

社会福祉法人




「介護情報基盤って、結局いつから何が始まるの?」 「LIFE、ケアプラン連携、資格確認…結局なんなの?」

社会福祉法人、事務職・管理者の皆様は、次々と出てくる新しい単語に戸惑われているかもしれません。

2026年4月(令和8年4月)から、また新しいシステムが「始まる」と聞いて、

「ウチはまだ紙とFAXがメインなのに…」

と、対応を考え始めている方も多いでしょう。

まずはご安心ください。

結論から言えば、2026年4月は「準備が整った自治体から順次スタート」であり、全国での本格運用は2028年(令和10年)4月が「目標」とされています。

ただし、「じゃあ、まだ何もしなくていい」と考えるのは早計かもしれません。

なぜなら、システム導入の第一歩を支援する助成金の申請が、まさに2025年10月17日から始まったからです。

この記事では、「介護情報基盤」とは結局何なのか、介護関連事業所が「今」何をすべきかを、最新情報に基づき分かりやすく解説します。

1. 結局、「介護情報基盤」とは何なのか?

「介護情報基盤」とは、介護に関する様々な情報(要介護認定、ケアプラン、日々の記録など)を、国、自治体、介護事業者、医療機関などでスムーズに共有・活用するための「デジタル情報の土台(インフラ)」のことです。

目的は「介護の質向上」と「事務作業の効率化」の2つです。

「また新しい巨大なシステムが一つできる」と考えるより、すでに動いている複数のシステムが、この土台(基盤)の上でつながっていくイメージが正確です。

介護関連事業所に関わる「中核3機能」

特に影響が大きいのは以下の3つの機能です。 (※これらは制度の主要機能を分かりやすく整理したもので、公的な機能名称とは異なる場合があります)

  1. 介護保険資格確認WEBサービス(=照会・閲覧)2026年4月から順次スタート予定。利用者の要介護認定の状況や期間などを、システム上で照会できるようになります。
  2. ケアプランデータ連携システム(=事業所間のやり取り)すでに開始(利用率はまだ低い)。サービス事業所とケアプラン(提供票など)をFAXや手渡しではなく、データで送受信する仕組みです。
  3. LIFE(科学的介護情報システム)(=データの蓄積・活用)すでに開始(段階的に拡大中)。サービス事業所が入力したADLや栄養状態などのデータを、ケアマネジャーも閲覧・活用し、根拠に基づいたプラン作成に役立てます。

つまり、これまで「紙・FAX・電話」で行っていた事務作業の一部が、これら3つの機能によってデジタルに置き換わっていく流れが加速します。

2. スケジュールを再確認。「2026年4月リミット」は誤解

「2026年4月に一斉スタート」と焦っている方も多いですが、正確なスケジュール(目標)は以下の通りです。

  • 2026年4月(令和8年4月):「介護保険資格確認WEBサービス」などが、準備が整った自治体から順次スタートします。この時点ではまだ利用できない自治体も多く存在すると予想されます。
  • 2028年4月(令和10年4月): 厚生労働省が、全市町村での本格運用開始を「目指す」としている目標時期です。

「まだ2年以上先か」と思いましたか?

しかし、「今」準備を始めるべき明確な理由があります。

3. なぜ「今」動くべき? 2025年10月に始まった「助成金」

最大の理由。それは、システム導入に必須の「機器」に対する助成金が始まったからです。

2025年10月17日、「介護情報基盤ポータル」にて、以下の助成金申請が開始されました。

  • 申請先: 国民健康保険中央会(国保中央会)
  • 申請期限: 2026年3月13日(令和8年3月13日)(予定)
  • 対象経費(例):
    1. マイナンバーカード読み取り用カードリーダーの購入費
    2. システム利用のための技術的支援(初期設定など)の費用
  • 助成限度額(例):助成限度額は、事業所のサービス種別によって細かく定められています。例えば「その他サービス種別」(1台まで)では4.2万円が上限とされています。(※ご自身の事業所種別における正確な上限額・対象経費は、必ず「介護情報基盤ポータル」の最新情報をご確認ください)

この助成金は、SaaS(介護ソフト)本体の利用料ではなく、「入り口」で必要になる機器(カードリーダー)と初期設定を支援するものです。

申請期限は(予定)とされていますが、予算が尽きれば早期に終了する可能性もあります。このチャンスを活用する価値は高いでしょう。

4. いますぐ事業所が準備すべき「2つのモノ」

助成金も始まり、2028年の本格運用目標も見えてきました。

今、具体的に準備を検討すべき「モノ」は2つです。

準備1:マイナンバーカード読み取り用「カードリーダー」

介護保険資格確認WEBサービスを利用するには、利用者の「包括的同意」を最初に得るために、利用者のマイナンバーカードを読み取る必要があります。

このために必要な「カードリーダー」が、今回の助成金(上限4.2万円など)の主な対象です。

まだ導入していない事業所は、助成金が出る「今」が導入の検討タイミングです。

準備2:介護情報基盤に「対応」した介護ソフト

「カードリーダーだけあっても、結局システムが古ければ連携できないのでは?」

その通りです。

  • 資格確認WEBサービスから照会した情報を、ソフトに「自動で」取り込めるか?
  • ケアプランデータ連携システムに「標準で」対応しているか?
  • LIFEのデータを「見やすく」活用できる機能があるか?

これらに対応していない古いソフトの場合、法改正のたびに手入力や別システムでの作業が発生し、非効率さが残る可能性も考えられます。

助成金を活用してカードリーダーを導入するこのタイミングで、今お使いのソフト会社に「中核3機能(資格確認、ケアプラン連携、LIFE)に完全対応できるか(または、対応予定か)」を確認することが、非常に重要です。

5. 【実務チェック】今すぐ確認すべき3つのこと

本格運用までには時間がありますが、今すぐできることから始めましょう。

  1. 助成金の詳細を確認するまずは「介護情報基盤ポータル」にアクセスし、ご自身の事業所が助成金の対象か、上限額はいくらか、申請に必要なものは何かを確認しましょう。
  2. 介護ソフトのベンダーに連絡する今使っているソフト会社に、「2026年からの介護情報基盤(資格確認など)に、標準機能で対応する予定はありますか?」と確認の連絡を入れましょう。
  3. 現場のネット環境を確認するカードリーダーや新システムは、当然ながらインターネット環境が前提です。事業所のPCやネット回線が古すぎないか、この機会に見直すのも良いでしょう。

まとめ:法改正は「危機」ではなく、事務作業を効率化する「チャンス」

2028年4月の本格運用目標に向け、「介護情報基盤」はゆっくりと、しかし確実に動き出しました。

これは社会福祉法人の事務職にとって、一見「対応すべき面倒な仕事」にしか見えないかもしれません。

しかし、見方を変えれば、「国の助成金(2025年10月開始)という”追い風”を利用して、長年課題だった非効率な業務をデジタル化する絶好のチャンス」です。

本格運用目標は「2028年」ですが、助成金が使える「今」こそ、自社の状況を確認し、準備を始める最適期です。

【出典・参考情報について】

この記事は、2025年10月31日時点で公開されている以下の情報を参考に作成しています。最新かつ正確な情報は、必ず各公式サイトでご確認ください。

関連記事

タイトルとURLをコピーしました