なぜ部下は動かない?原因は「権限と責任の一致」の無視かも。忖度と叱責の悪循環を断つ方法

ロジカルシンキング




「もっと主体的に動いてほしいのに、部下が指示待ちで困る…」

「良かれと思ってやったのに、上司から『なんで勝手なことをしたんだ』と怒られた…」

デスクワークの現場では、このような「期待のズレ」が日常的に発生します。その根底には、上司の意図を過剰に読み取ろうとする「忖度(そんたく)」と、その結果生まれた失敗に対する「理不尽な叱責」という、負のスパイラルが存在することが少なくありません。

実はこの問題、多くのケースで「権限と責任一致の法則」というシンプルな原則が守られていないことが原因です。

この記事では、マネジメントの基本であるこの法則を解き明かし、無駄な忖度と叱責をなくし、チームの生産性を向上させるための具体的な方法を解説します。もし、あなたの職場の風通しが悪いと感じているなら、きっと解決のヒントが見つかるはずです。

そもそも「権限と責任一致の法則」とは?

「権限と責任一致の法則」とは、組織論の父と呼ばれるアンリ・ファヨールが提唱した、マネジメントにおける非常に重要な原則です。言葉の通り、「ある責任を誰かに与えるならば、その責任を全うするために必要な権限もセットで与えなければならない」という考え方を指します。

  • 責任(Responsibility): 業務を遂行し、目標を達成する「義務」
  • 権限(Authority): 業務遂行のために必要な意思決定を行い、ヒト・モノ・カネを動かす「権利」

この2つのバランスが取れていて、初めて人はパフォーマンスを最大限に発揮できます。

逆に、このバランスが崩れると、組織には必ず歪みが生まれます。

  • 責任>権限: 「売上目標は必達だ。でも予算は与えない。やり方は全部私の許可を取ってくれ」という状態。部下は身動きが取れず、責任だけを押し付けられるため、モチベーションは下がり、失敗の確率が上がります。
  • 権限>責任: 「君の好きにしていいよ。失敗したら別のやつの責任にするから」という状態。責任を負うリスクがないため、無責任な意思決定が横行し、組織が崩壊するリスクを伴います。

あなたの職場では、このバランスは適切に保たれていますか?

部下を叱る前に!あなたの指示は「権限と責任」が一致していますか?

部下が期待通りの成果を出せなかった時、感情的に叱る前に一度立ち止まって、自分自身の指示の出し方を振り返ってみましょう。以下の3つのポイントを自問自答してみてください。

再確認①:達成すべき「責任」を明確に伝えたか?

「この資料、いい感じに作っておいて」といった曖昧な指示はNGです。

「〇月〇日までに、△△会議で使うための競合A社の動向分析資料を作成してください。特に重視すべきは、B製品の市場シェアに関するデータです」

このように、いつまでに、何を、どのレベルで達成すべきかという「責任の範囲」を具体的に定義して伝えましたか?

再確認②:責任を果たすための「権限」を十分に与えたか?

責任だけを伝えても、部下の手足が縛られていては意味がありません。

「資料作成にあたり、月額〇円までの有料データベースの利用を許可します。また、関連部署のCさんへのヒアリングも、私の名前を使って自由に実施して構いません。」

このように、責任を全うするために必要な予算、情報へのアクセス、関係者への協力依頼など、具体的な「権限」をセットで与えましたか?

再確認③:失敗は「権限の範囲内」での出来事か?

もし部下が失敗したとしても、それが与えられた権限の範囲内で、最善を尽くした結果なのであれば、それは部下の能力不足ではなく、権限を与えた管理職の「判断ミス」である可能性があります。

叱責の対象は、部下の人格や能力ではなく、「なぜその判断をしたのか」というプロセスであるべきです。与えられた権限を逸脱した行動(例:許可なく高額なツールを契約した)であれば、それはルール違反として明確に指導する必要があります。

まとめ:健全な職場は「権限と責任が一致した状態」から始まる

今回は、多くの職場が抱える「忖度」や「理不尽な叱責」の問題を、「権限と責任一致の法則」という視点から解説しました。

  • 責任を与えるなら、必ず権限もセットで渡す
  • 忖度は、権限と責任のバランスが崩れた時に生まれる不合理な行動である
  • 部下を叱る前に、自分の指示がこの原則に沿っていたかを確認する

この原則を意識するだけで、上司と部下の間の無用なストレスは激減し、コミュニケーションは驚くほど円滑になります。部下は与えられた権限の範囲で主体的に動けるようになり、上司は結果に対する責任の所在を明確にできます。

まずは、あなたが明日依頼する一つの仕事から、「これは責任と権限が一致しているだろうか?」と考えてみてください。その小さな一歩が、チーム全体の生産性を高め、健全な職場環境を作るための確実な変化につながるはずです。

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