「年度末で忙しい」と言っている人の周りではいったい何が起こっているのか
3月も中旬となり、周りでは花粉症で辛そうな方たちが増えてきました。この時期がピークのようですね。
そしてこの時期、花粉と同じくらい飛び交うのが、「年度末で忙しい」という話題です。
同僚も、出入り業者さんも、その他の職種の方も、とにかくこの言葉を発します。なんとなくイメージは沸くのですが、実際に何が忙しいのかと聞かれると、なかなか具体的には想像できません。
そこで、「年度末で忙しい」と言っているそれぞれの職種の方に、いったいなにが忙しいのかを聞いてみました。
年度末=決算
年度末と聞いてまず思い浮かべるのが、「決算」という言葉でしょう。
決算とはいったい何なのでしょうか。
どの企業にも、会計期間というものがあります。通常、4月1日から翌年3月末日までとしているところが多いようです。この3月末日を「決算日」といいます。
企業は、この会計期間に発生する企業活動(売上・費用の発生など)を集計します。最終的に3月31日までの集計をまとめるわけですが、この集計されたものを「決算書」と呼びます。決算書は、決算日までの企業の1年間の成績、そして決算日における企業の状態を数字で表しています。
ということは、1年間の活動のしめきりである決算日までに、ノルマなどはクリアしておかないと、決算書には反映されないわけです。
なんにせよ、この「決算」という一区切りが、「年度末で忙しい」を発生させている要因のようです。
では、職種別にみてみましょう。
「経理部門」
経理部門では、随時、企業の売上や費用を記録(仕訳)して会計処理を行います。その集計である「決算書」を作成するのも経理部門の仕事です。
ところがこの「決算書を作成する作業」で忙しいのは、厳密には年度末ではありません。決算書は年度末時点の成績表ですから、この日が過ぎてからしか作成できないからです(もちろん事前の準備も大変なのですが)
では、年度末は一体何が忙しいのか。
それは、予算書の作成です。
予算書とは、その会計年度にどのような収入があり、どのような支出があるのかをあらかじめ予測し、その上限額を定めた計算書類のことです。会計年度が始まると(4月になると)、この予算額の範囲内で支出などを行っていくこととなります。
ということは。
まだ決算書も出来上がっていない1月~3月の時期に、4月からの収入や支出の予測し予算書を作成しなければならないわけです。
これはキツい。
この予測精度が低ければ、とんでもない予算書が出来上がってしまいます。経営陣の事業計画にも多大なる誤差修正が必要となるでしょう。新規事業もこの予算書を基に動くわけですから、そもそも利益なんか出ない事業だった、なんてことがあとで判明してしまうわけです。下手すると会社がつぶれます。
予測そのものも困難を極めます。経理部門が来年の事業のことを、その事業を企画した部署に聞いて周っても、意外と数字的なことは把握されていなかったりして、聞き取りが聞き取りにならないこともあります。
結局、事業そのものを経理部門がしっかりと把握と理解をし、1から収支計算をし始めることも珍しくありません。「そもそも利益が出るかもわからずに作った企画がなぜ通った!?」と言いたくなることもしばしば。
作成作業に膨大な時間をかけ、ストレスやプレッシャーで心身を痛めながら、今日も経理部門は予算書を作成しているのでしょう。(この時期だと終わってないとまずいですが・・・)
「人事労務部門」
年度末の人事労務部は何をしているのでしょう。
この時期は、すでに4月からの採用者も決定し、採用に伴う準備を着々とすすめています。
・・・だけだと良いのですが。
恐ろしいことに、人が突然辞めることが多いのも3月。
この時期になると、各部門責任者から連絡が来ます。
「うちの○○が今月で辞めるって」
もちろん、「辞めるから手続よろしく」、ということではありません。
「代わりの職員、4月からよろしくね」
ということです。
言うのは簡単です。この時期の求人はとても大変だということを、他部門の人間に理解しろというのは難しいでしょう。
まず、時間がありません。これから求人票出して応募者からの書類を選考して採用試験して・・・。
そして3月は、すでに就職活動なんてとっくに終わった時期。求職者の数も激減します。
ですが4月になんとか間に合わせようと無理すると、採用基準が甘くなるなど、何かと失敗してしまいます。
「うちに入った○○、なんであんなのを人事部は入れたんだ」
「お前のせいで部下が辞めたからだよ」と言いたいところですが、言ったら人事労務屋として終わりです。ぐっとこらえるしかありません。
いま、人事労務部が忙しいのは、まだ採用に奔走しているからかもしれませんね。(この時期にまだ探していたら手遅れですが・・・)
「営業職」
これはわかりやすいですね。
1年間のノルマが達成できていない営業マンにとって、年度末という締め切りは本当に嫌なものです。
「年度末で忙しい」という言葉で真っ先に思い浮かぶ光景は、このようなものかもしれません。
良い商品を作れば売れる、という時代はとっくに終わっています。
良い商品も、それを必要としている人に知っていただかなければ売れません。また、良い商品だということを理解してもらわなければ買っていただけません。
営業職は自分という人間を担保に、お客様に信頼していただいて、商品を買ってもらいます。会社の売上を本当の意味で作っているのは営業職かもしれませんね。
なので、
「年度末で忙しいんだよねー」というボヤキに、「え!? 年度末まで何してたの!?」などと言ってはいけません。
ほんとに大変なんですよ。
「税理士」
意外なことに、年度末は決算で忙しいわけではありません。前述した経理部門と同じ理由です。
では何が忙しいのでしょう。
最も多いのは、「確定申告」のようです。
確定申告とは、昨年1月~12月の所得などを計算し、所得税の確定を行う作業のことです。
税理士さん一人で、一人のお客様を持っているわけではありません。数十人もっている税理士さんもいるようです。
今年の確定申告の期間は、2月16日(木)〜3月15日(水)。例年、1ヵ月程度です。このたった1ヵ月で全てのお客様の確定申告を確実に終わらせなければならないのです。
聞くところによれば、盆と正月どころかクリスマスまで一緒に来た忙しさだそうで。
この時期、会社の顧問税理士事務所へ電話をすると冷たい対応をされることが多いのは、このためです。(たぶん)
以上、周りで聞き取った分を、ざっと書いてみました。
他の職種にもいろいろと聞いてみましたが、ひとつ言えることは、
「年度末は暇だ」という職種は無い。
ということです。
忙しいときこそ力を合わせ、この繁忙期を乗り切りましょう。