弱者が強者に勝つために|「選択と集中」とは?
「選択と集中」という言葉があります。
ビジネス書を紐解くと当たり前のようによく出てくる言葉ですね。
いったいどのような意味なのでしょうか。
限られた経営資源を効果的に使う
「選択と集中」とは、中小企業など経営資源の乏しい企業が勝ち残るための戦略の1つです。
経営資源とは一般的に「ヒト・モノ・カネ」を指します。
大企業と違い、中小企業はこの経営資源が限られています。
当然、大企業と同じことはできませんし、同じようなことをしても大企業にはとうてい敵いません。
そこで、活路を見い出せそうな部分や戦略などを「選択」し、そこに少ない経営資源(ヒト・モノ・カネ)を「集中」させます。
これを「選択と集中」と言います。
A菓子店の危機
具体例を挙げてみます。
ある町に、小さなお菓子屋さんがありました。
仮に、「A菓子店」とします。
A菓子店は、和菓子から洋菓子、誕生日ケーキやクリスマスケーキも販売しています。
大繁盛とまでは言いませんが、経営は概ね順調です。
ところが、近所に大型ショッピングモールが出店してくることになりました。
全国展開している有名ショッピングモールです。仮に、「Bショッピングモール」とします。
店内には当然お菓子屋さんも多数入ることとなり、A菓子店の経営に重大な影響を与えるでしょう。
さて、生き残るためには、どのように「選択と集中」すればよいでしょうか。
A菓子店の「選択と集中」
それでは、「選択と集中」を考えてみます。
A菓子店を、広く商品を扱う菓子店から、これまでも好評であった「ロールケーキ」のみを専門に扱う「ロールケーキ専門店」に転換してみましょう。
数ある商品群の中から「ロールケーキ」を選択し、そこに経営資源である、ヒト・モノ・カネを集中させます。
(ヒト)職人さん全員にロールケーキのみに特化した技術を身に着けさせ、またロールケーキ作りに長けた職人さんを雇用する。
(モノ)現在ある機械はロールケーキを作るのに最適となるよう改造。導線もロールケーキ作りに特化。
(カネ)独創性の高いロールケーキのバリエーションを開発するための開発資金を投下。
また、一般的に、専門店化すると遠くからもお客様が来るようになります。
「ロールケーキ専門店を目当てにわざわざ隣町からやってくる」ということが起こり、中には県外からわざわざ来る方もいるかもしれません。当然ネット販売も有効でしょう。
逆に、コンビニやショッピングモールのような、いわゆるワンストップサービス(そこにいけば全てがそろうので他店に行く必要がない)を提供する場合、お客様は近辺からしかやってきません。
「お目当てのコンビニに隣町からやってくる」という人はまずいないでしょう。近所のコンビニにも同じものが同じ値段で売られているからです。
こうして、A菓子店のお客様と、Bショッピングモールのお客様は、あまり競合しなくなります。
A菓子店のお客様は遠方の方が多く、Bショッピングモールのお客様は近辺の方が多くなるためです。
また、ロールケーキにのみ特化するということは、仕入れる材料の種類は減り、量は増えることとなります。
材料業者から大量に同一の材料を仕入れるわけですから、値段交渉がしやすくなり、コストを抑えられるかもしれません。
安易に販売価格を下げず、高価格路線で専門性をアピールしつつ、コスト削減したことによる利益を得ましょう。
従業員の教育も簡単になります。
ロールケーキだけ作ればいいので、教えなければならない項目は減り、新人さんでも短期間ですぐ戦力になります。
これが「選択と集中」の一例です。
経営資源「ヒト・モノ・カネ」を、ロールケーキに集中してみました。
更に一歩踏み込む、「選択と集中」
言うのは簡単ですが、しようと思うと意外と難しいのが、「選択と集中」。
いざ実行してみても、なかなか成果が出ないものです。
なぜでしょうか。
この「選択と集中」について、素晴らしい名言を残した人物がいます。
アップル社の設立者、スティーブ・ジョブズです。
何をしないのか決めることは、何をするのか決定することと同じくらいに重要だ。
Deciding what not to do is as important as deciding what to do.
選択と集中がうまくいかない理由の大半は、選択して集中「しきれていない」ことです。
それは、まだまだ余計なことに経営資源を集中させてしまっていることに他なりません。
まとめ
このような企業経営理論は、総じて個人にも活用できます。
今一度、自分のことも見つめてみましょう。
選択と集中、できていますか?